2024年12月、韓国国会にユン・ソンニョル大統領の弾劾案が提出されました。
非常戒厳という前代未聞の対応に対して、「憲政秩序の破壊」と最大野党が強く反発したのです。
しかし結果は、「可決されなかった」ではなく「採決すらされなかった」。
この“未成立”という結末には、韓国政治の制度と駆け引きが色濃く絡んでいました。
この記事では、弾劾案が通らなかった理由、制度の構造、そして今後の展望を整理します。
韓国の弾劾制度とは?2段階のプロセス
韓国の大統領弾劾は、以下の2段階で構成されています。
- 国会での弾劾案可決(在籍議員の過半数出席+3分の2以上の賛成)
- 憲法裁判所が180日以内に審理し、最終的に「罷免するかどうか」を判断
つまり、国会だけでは大統領を辞めさせることはできません。
司法機関である憲法裁判所が最終判断を行うのが韓国の特徴です。
弾劾のきっかけは「非常戒厳」
12月3日、ユン大統領が突然発表した非常戒厳。
これにより軍部が国会に入るという異常事態が起こり、「文民統制の崩壊」として野党は強く反発しました。
非常戒厳は1980年の光州事件以来の措置であり、憲法に定められた発令要件(戦争・内乱)に該当しないとの声が大半を占めました。
こうした背景から、野党は12月4日に弾劾案を提出しました。
採決不能に。与党の“退席戦略”とは?
12月7日、国会本会議が開かれ、弾劾案の採決が予定されていました。
しかし、与党「国民の力」の多くの議員が本会議を欠席。定足数(過半数出席)を満たせず、採決は行えませんでした。
これは「反対票を入れて否決」するのではなく、「そもそも成立させない」という戦術。
批判を避けながら弾劾を潰すという、ある意味で最も効果的な政治的ブロックです。
なぜ反対せず、出席しなかったのか?
与党内でもユン大統領への不満はあるとされますが、弾劾が成立すれば政権の正当性が崩れるため、正面から反対票を投じることもできなかったと見られています。
そのため、「採決をさせない」という中間的な立場を取ったわけです。
これは過去の韓国政治でもたびたび見られた“沈黙による否決”の一種です。
弾劾案は再提出できるのか?
韓国の国会規定では、同じ会期中に同じ内容の弾劾案を再提出することはできません。
これを避けるため、野党は「毎週臨時国会を開く」という戦略を打ち出しました。
会期を週ごとに切り替えれば、そのたびに弾劾案を再提出することが可能です。
野党はこの方法で、与党内からの造反を狙っていく構えです。
可決されたらどうなる?憲法裁判所の判断
弾劾案が国会で可決された場合、大統領はその瞬間から職務停止となり、首相が代行します。
その後、憲法裁判所が審理に入り、180日以内に弾劾の妥当性を判断します。
ただし、裁判所の構成は大統領の任命が関与しており、中立性が疑問視される場面もあるため、政治的圧力がゼロとは言い切れません。
親子トークタイム!子どもにどう伝える?
「弾劾ってなに?」と聞かれたら、こう話してみましょう。
「学校で、委員長がルールを守らなかったときに、みんなで“もうこの人やめさせよう”って話し合うことがあるよね。国でも同じように、ルールを破ったリーダーをやめさせる仕組みがあって、それを“弾劾”っていうんだ。でも今回は、会議に出なかった人が多くて、話し合い自体ができなかったんだよ。」
この話をきっかけに、「ルール」「責任」「話し合いの大切さ」を自然に伝えることができます。
まとめ
・ユン大統領の弾劾案は非常戒厳を理由に野党が提出
・与党議員の退席により定足数不足となり、採決できず廃案に
・形式上は「否決」ではなく「未成立」
・野党は会期を切り替えて再提出を繰り返す構え
・弾劾可決後は憲法裁判所が180日以内に最終判断を下す
関連記事