2024年末、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が突然「非常戒厳」を発令し、翌日に解除されるという極めて異例の政治的事態が発生しました。この判断は韓国社会を揺るがし、野党による弾劾請求、関係者の捜査、そして支持率の急落という連鎖的な混乱を引き起こしています。
この記事では、なぜ大統領が非常戒厳を出したのか、戒厳とは何か、そして今後韓国はどうなるのかを、制度・歴史・世論の視点からわかりやすく解説します。
参考リンク
なぜ韓国で戒厳令?過去と違う異例の対応、その理由とは
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戒厳令中の韓国、旅行は大丈夫?現地の状況と今後の見通し【2025年版】
韓国の非常戒厳とは?歴史と制度を振り返る
韓国の戒厳令には「警備戒厳」と「非常戒厳」の2種類があります。非常戒厳は軍の権限が強くなり、警察機能や検閲、集会の規制などが可能になります。これは戦時や内乱など国家の非常事態に限定される制度で、民主国家では極めて慎重に使われるべき措置です。
最後に非常戒厳が出されたのは1980年の光州事件。当時は軍事政権下で、民主化運動に対して軍が武力で鎮圧し、多数の死傷者が出ました。今回のユン大統領による発令は、それ以来44年ぶりで、平時の民主国家での発令として極めて異例です。
戒厳発令の背景と目的、なぜ今だったのか?
2024年12月3日、ユン大統領はテレビ演説で「国会の機能が停止し、国政は麻痺している」と述べ、憲政秩序を守るためとして非常戒厳を発令しました。国会が予算案の成立に合意せず、与野党の対立が激化していたことがその理由とされます。
この戒厳により、軍の部隊が国会に突入するという事態に発展。一部報道ではヘリの着陸も確認され、国民に強い衝撃を与えました。与党からも「違憲の可能性がある」との批判が噴出し、発令からわずか数時間後、国会は戒厳解除の決議を可決。ユン大統領も翌4日朝に解除を表明しました。
弾劾と捜査の連鎖、政権への逆風
戒厳令の翌日、最大野党「共に民主党」はユン大統領の弾劾案を国会に提出。しかし、与党議員の退席によって採決は行われず、いったん廃案となりました。それでも野党は、週に一度のペースで臨時国会を開き、弾劾案を繰り返し提出する構えです。
一方で、非常戒厳を進言したとされるキム・ヨンヒョン前国防相が検察により拘束され、続いて警察庁長官やソウル市警幹部にも捜査の手が及んでいます。政権中枢に対する法的責任の追及が本格化している状況です。
国民の声と支持率の急落
12月中旬時点での複数の世論調査では、ユン大統領の支持率が21%まで低下。就任以降、最低の数字となりました。特に若年層と中道層からの支持が大きく落ち込んでいます。
支持離れの背景には、非常戒厳の強権的手法だけでなく、以下のような要因が重なっています。
- ファーストレディに関するスキャンダル報道
- 物価高騰や住宅問題など、生活経済の悪化
- メディアへの締め付けと批判的言論への圧力
支持率の推移や要因についてはユン大統領の支持率が急落した理由をあわせてご確認ください。
海外の反応と日本への影響
民主主義国家における非常戒厳の発令は、国際的にも強い懸念を呼びました。アメリカ、EU、日本など主要国は韓国の動向に注視を強めています。とくにユン政権下で関係改善の兆しがあった日韓関係にも、再び緊張が生じる可能性があります。
外交的には「韓国の政治的安定性」が問われる局面であり、経済・安全保障にも波及するリスクが高まっています。
今後どうなる?弾劾の行方と政局の展開
今後、弾劾案が国会で可決された場合、ユン大統領は即時職務停止となり、首相が代行。180日以内に憲法裁判所が弾劾の可否を判断します。
一方、否決が続けば、ユン大統領が「不当な政治攻勢に打ち勝った」として反転攻勢に出る可能性もあります。いずれにしても、韓国政治は2025年にかけてきわめて不安定な状況が続く見通しです。
親子トークタイム!子どもにどう説明する?
子どもに政治の話をするときは、身近な例えが有効です。
「学校でみんなの話し合いがうまくいかなくて、ある子が“もう全部ぼくが決めるよ!”って言っちゃったんだ。でも、それを聞いたみんなが“それはダメだよ”って言って、やり直すことにしたの。今はその子が反省してるか、みんなで考えてるところなんだよ。」
このように説明することで、「話し合いとルールを守ることが大事なんだ」という民主主義の基本が伝わります。
まとめ
ユン大統領は2024年12月に非常戒厳を発令。民主化以降では初の事態となり、国内外に大きな衝撃を与えました。戒厳は翌日に解除されたものの、野党の弾劾要求、関係者の捜査、支持率の急落など、政権はかつてない危機に直面しています。
国際社会もこの状況に注目しており、韓国の民主主義の健全性が今、改めて問われています。