まずは結論
- 死海は海ではなく超高塩分の湖。イスラエルとヨルダンの国境にあり、海抜−430m前後と地球最低所級。
- 塩分濃度は約30〜35%で密度が高い→浮力が大きいから体が浮く。魚は基本いないが好塩性微生物は生きる。
- 近年は水位低下とシンクホールが深刻。体験は楽しいけれど、目・口・長湯に要注意。
Contents
基本データ(早見表)
| 指標 | 内容 | メモ |
|---|---|---|
| 区分 | 塩湖(海ではない) | 英:Dead Sea |
| 位置 | イスラエル/ヨルダンの国境湖 | 周縁にパレスチナ自治区の一部 |
| 標高 | 約 −430m | 世界最低所級の陸地 |
| 塩分濃度 | 約30〜35% | 海水は約3.5% |
| 主成分 | NaCl中心+Mg・K・Ca | “しみる/痛い”主因のひとつ |
| 気候 | 乾燥・高日射、冬は温暖・夏は酷暑 | 低地で気圧は高め |
| トピック | 浮遊体験/泥パック/水位低下・シンクホール | 観光と環境の両面で話題 |
どこにある?地図と成り立ち
死海はヨルダン大地溝帯の窪みにたまった湖。ヨルダン川などから水が入り、外海への出口がない“閉鎖湖”です。
乾燥気候で水は蒸発>流入になりやすく、塩やミネラルが濃縮→超高塩分へ。
観光はイスラエル側・ヨルダン側の両方で整備されています。
なぜ浮く?密度と浮力の超入門
浮力は水の密度に比例。死海のブライン(塩水)は海水の約10倍の塩分濃度で異常に密度が高い→押し上げる力(浮力)が強いため、仰向けで静かにしていれば自然に浮きます。
NG:うつ伏せ・バタ足・顔を水面近くへ。目や口に入れないのが鉄則。

危険・失明・飲んだら?
- 目に入る→激痛。真水の洗眼を即実施。
- 飲用厳禁。少量でも強烈な刺激・嘔吐リスク。
- 溺れる危険:浮く=安全ではない。仰向け限定・波風がある日は中止。
- 長湯:10〜20分目安で切り上げ、真水で洗う→保湿。
- 剃毛直後や傷がある日は避ける(しみる/炎症の原因)。
塩分濃度・成分の基礎
- 濃度:おおむね30〜35%(場所・季節で変動)。
- ミネラル:NaClに加えMg・K・Caなど。Mgが多いとしみやすい。
- “痛い”正体:高浸透圧塩水が粘膜・傷を刺激。アクセサリーは外す(腐食・変色)。
生き物はいる?“無生物”ではない
魚や大型生物は基本いませんが、好塩性の藻類・細菌が生きています。雨季の一時的な淡水流入で色調が変わる区域も。
“死の海”でも微生物はしたたかです。
死海は“なくなる”?水位低下とシンクホール
- 水位低下:上流の取水増大・蒸発・産業利用などで長期的に低下。
- シンクホール:沿岸の塩層に淡水が入り→空洞化→崩落。突然大きな穴が開くことがあり、立入禁止エリアが拡大。
観光の基本:未舗装の岸辺に近づかない/標識・ロープを厳守/舗装・施設のある専用ビーチを選ぶ。

死海文書とは?
死海の自然現象とは別テーマ。クムラン近郊の洞窟で見つかった古文書群で、宗教史・言語史の金字塔。
博物館展示や遺跡見学はイスラエル側が定番ルート(最新案内を確認)。
ウユニ塩湖・カスピ海との違い
死海 vs ウユニ塩湖
| 死海 | ウユニ塩湖 | |
|---|---|---|
| タイプ | 塩湖(液体) | 塩原(固体 crust) |
| 体験 | 浮遊・入水/泥パック | 鏡張り(雨期)/幾何学模様(乾期) |
| 標高 | −430m(低地) | 約3,700m(高地) |
| 生態 | 好塩性微生物中心 | 藻・微生物など |
死海 vs カスピ海
- カスピ海:巨大内海(汽水〜塩水)。多様な魚介が棲む。
- 死海:超高塩分の塩湖。大型生物は基本不可。地理・生態・利用の性質が違う。
もう一つの比較対象として、アルカリ性が極端に高いソーダ湖の代表・ナトロン湖もチェック。赤~ピンクの色調や石灰化など、死海とはまた違う“極限環境の顔”が見えてきます。
観光の実務(ヨルダン側/イスラエル側)
- 時期:**春(3–5月)/秋(10–11月)**が快適。夏は酷暑、冬は温暖。
- 体験:ホテルの専用ビーチが安全・楽(シャワー/監視員/レスキュー)。
- 治安:主要リゾートは整備。ただし国境線・未整備地帯に近づかない。
- 準備:真水・タオル・保湿・サンダル(底が熱い/結晶が痛い)。アクセサリー×。
- 移動:公共+タクシー or レンタカー(保険確認)。旅行保険は救援者費用つきで。
泥パック・コスメ・“食用塩”
- 泥パック:ミネラル豊富とされスパで人気。医療効果は断言不可(体感差)。
- コスメ:塩・ミネラルのバスソルト/クリームなど多彩。肌質に合う/合わないがあるためパッチテスト推奨。
- 食用塩:食品表示のある製品のみを使用。土産のソルトは化粧・入浴用が多い。
ちょっと科学で遊ぶ:ミニ実験(自由研究OK)
「なぜ浮く?」を家で再現
- コップ3つに真水・食塩水(5%)・濃い食塩水(20%)。
- 生卵やスーパーボールをそっと落とす。
- 濃いほど浮く=密度↑で浮力↑。
※飲用不可・後片付け徹底、手指洗浄も忘れずに。
よくある誤解(先回りで訂正)
- 「浮くから安全」 → 溺れるリスクは普通にある。仰向け限定/短時間/波風に注意。
- 「生物ゼロ」 → 微生物はいる。
- 「塩は食べてOK」 → 食品表示がない塩は食べない。
- 「死海=ウユニ」 → 仕組みも体験も完全に別物。
FAQ
Q
どこの国?どこにある?
A
イスラエルとヨルダンに挟まれた国境湖。ヨルダン川の下流域です。
Q
なぜ浮く?
A
塩分が非常に高く水の密度が大きいため、浮力が強いからです。
Q
目に入った・飲んだら?
A
真水で即洗眼/飲用は危険。症状が強ければ医療へ。
Q
生き物は?
A
魚は基本いませんが、好塩性微生物は生きます。
Q
“なくなる/消滅”は本当?
A
水位低下と沿岸シンクホールは深刻。将来像は水収支の改善策しだいです。
Q
“死海文書”は関係ある?
A
自然現象とは別。クムランの古文書群で、博物館展示の見学が可能です。
根拠と参考資料
本文の整理にあたって、公的・一次解説や教育向けの信頼できる資料を中心に参照しました。