ロシア・ウクライナ戦争では、物理的な戦闘だけでなく、情報空間での「プロパガンダ戦争」も激しく繰り広げられています。プロパガンダは、戦争の正当化、敵国の士気低下、国際社会の世論操作といった目的で活用され、戦場の外でも戦況に影響を与えています。
特に、ロシアは長年にわたり情報戦を国家戦略の一部として利用しており、フェイクニュースやディープフェイク、国家主導のメディアを駆使して自国に有利なストーリーを作り上げています。一方、ウクライナもSNSを駆使し、国際社会の支持を得るための情報戦を展開しています。
本記事では、ロシアとウクライナがどのようなプロパガンダ戦略を採用しているのか、また、それが世界にどのような影響を与えているのかを詳しく解説します。
1. プロパガンダとは?戦争における情報戦の役割
プロパガンダとは、特定の思想や立場を広めるために、意図的に操作された情報を流布する行為を指します。戦争においては、以下のような目的で利用されます。
① 戦争の正当化
戦争を開始する際、自国民や国際社会に向けて「なぜ戦わなければならないのか」という大義名分を示すためにプロパガンダが使われます。
例:ロシアは「ウクライナ政府はネオナチであり、ロシア系住民を迫害している」と主張し、ウクライナ侵攻を正当化しました。
② 敵国の士気低下
相手国の軍や国民の士気を削ぐために、偽情報を用いることがあります。
例:「ウクライナ軍の指導部が国外に逃亡した」「ロシア軍が首都キエフを包囲した」などの虚偽情報が拡散され、ウクライナ側の混乱を狙いました。
③ 国際社会の世論操作
敵国への支援を妨げるために、同盟国や支援国に対して偽情報を流す戦術もあります。
例:「ウクライナに提供された武器がブラックマーケットに流れている」との情報を拡散し、西側諸国のウクライナ支援を減少させる試みが行われました。
2. ロシアのプロパガンダ戦略
ロシアは、情報戦を軍事戦略の重要な柱とし、さまざまな手法でプロパガンダを展開しています。
① 国家メディアによる情報操作
ロシアの国営メディアは、戦況を自国に有利なように伝え、ロシア軍の勝利を強調する報道を行っています。
- ロシア国営テレビはウクライナを「テロ国家」と表現
- ロシア軍の戦果を誇張し、国民の愛国心を高める番組を放送
② SNSを使った世論誘導
ロシアはボット(自動投稿プログラム)やトロールを活用し、大量の偽情報を拡散しています。
- ゼレンスキー大統領がウクライナを脱出したというデマを拡散
- ウクライナの戦況を不利に見せる映像を加工し、SNSに投稿
③ ディープフェイクの活用
ロシアはディープフェイクを用いて、ウクライナ指導者が降伏を宣言する偽動画を作成し、混乱を引き起こそうとしました。
3. ウクライナのプロパガンダ戦略
ウクライナもロシアの情報戦に対抗し、国際社会の支持を得るための情報戦略を展開しています。
① SNSを駆使した情報発信
ゼレンスキー大統領は、インスタグラムやツイッターを通じて、自国の現状を世界に向けて発信しています。
- 戦争初期に「私はここにいる」とキエフから自撮り動画を投稿
- ウクライナ軍の戦果をSNSで報告し、国民の士気を高める
② 国際メディアとの連携
ウクライナ政府は、西側メディアと連携し、ロシアのプロパガンダに対抗するための情報提供を行っています。
- ロシアの戦争犯罪に関する証拠映像を公開
- 国際ニュース番組にウクライナ政府関係者が出演し、正確な情報を伝える
【おやこトークタイム!】子どもに伝える方法
情報戦やプロパガンダの仕組みは、子どもにとって難しい概念かもしれません。以下のように、身近な例えを使うと理解しやすくなります。
子どもにこう話してみよう
「戦争では、実際に戦うだけじゃなくて、みんながどっちを応援するかを決めるために、情報を使って作戦をすることもあるんだよ。たとえば、ロシアは『ウクライナが悪いことをしている』って言って戦争を正当化しようとしているし、ウクライナは『私たちは助けを必要としている』って世界に呼びかけているんだ。
でも、全部の情報が本当とは限らないから、私たちも気をつけて、どの情報が正しいのかを考えることが大切なんだよ。」
まとめ
- ロシアは国家メディアやSNSを活用し、戦争を正当化するプロパガンダを展開
- ウクライナはSNSや国際メディアを活用し、国際社会の支援を得るための情報戦を展開
- 戦争では、実際の戦闘だけでなく、情報そのものが「武器」となる
情報の正確性を見極める力を持つことが、現代社会においてますます重要になっています。