日本経済に何が起こる?相互関税で変わる輸出・雇用・為替

日本経済に何が起こる?相互関税で変わる輸出・雇用・為替

2025年4月、アメリカのトランプ政権が発表した「相互関税(reciprocal tariff)」政策により、日本を含む世界中の貿易相手国に新たな関税が課されることとなった。日本に対しては**24%**という高い税率が設定され、その影響は一部業界にとどまらず、日本経済全体に波及するとみられている。

本記事では、日本に与える具体的な影響について、輸出品目、雇用、為替、株価、そして中長期の経済構造まで視野に入れて解説する。

相互関税の全体像をまだ把握していない方は、「相互関税とは何か?トランプ政権の新政策が世界経済に与える衝撃」を先に読んでおくと理解がスムーズだ。

対日関税率は「24%」──トヨタからホタテまで広範囲に影響

今回、日本に対して設定された相互関税率は24%。これは世界的に見ても高い水準で、中国(34%)、カンボジア(49%)などを除けば、最も厳しい部類に入る。

対象品目は政府発表では明示されていないが、既に追加関税(25%)が発動された自動車を筆頭に、アメリカ向けの主要輸出品である以下の分野が影響を受けるとみられる。

  • 自動車(6兆円超)
  • 建設用・鉱山用機械(約9000億円)
  • 半導体製造装置(約5300億円)
  • 光学機器・医薬品(約4000~5000億円)
  • 食品・農産品(約2400億円:ホタテ、牛肉、日本酒など)

こうした品目は、もともと関税が低い、あるいはゼロだったものも多く、今回の24%課税は大きな負担増となる。

詳細な国別関税率は「【2025年最新版】相互関税の国別一覧と関税率まとめ」で確認できる。

自動車産業に直撃──GDP押し下げも予測

日本経済にとって最も深刻な影響が懸念されているのは、自動車産業である。すでにアメリカ市場では、トヨタ、ホンダ、日産が高いシェアを持ち、販売台数・生産拠点ともに依存度が高い。

民間の経済シンクタンクは、自動車への相互関税導入により、日本のGDPが0.2%押し下げられるという試算を公表している。これは、2024年の年間成長率(0.1%)を上回る規模で、実質的に1年分の成長が帳消しになる計算だ。

また、自動車部品を供給する中小企業の打撃も深刻で、地方経済への影響も無視できない。

株価・為替・投資──マーケットは敏感に反応

関税発表直後、東京市場では日経平均株価が急落し、2025年最大の下げ幅を記録した。自動車、電子機器、輸送関連銘柄が軒並み売られ、外国為替市場では急速な円高が進行した。

理由は以下の通り:

  • アメリカでの売上・利益が減る → 株価下落
  • アメリカ経済が減速 → ドル売り
  • 世界的な不確実性 → 円が安全資産として買われる

このように、相互関税の影響は実体経済だけでなく、金融市場にも直結している。

雇用と供給網にも影響

直接的な関税負担は輸出企業にかかるが、その余波は雇用サプライチェーンにも波及する。

たとえば、自動車メーカーがアメリカでの販売減を見込んで減産すれば、国内工場の稼働率も低下し、正社員だけでなく派遣や契約社員の雇用にも影響が及ぶ。

また、建設機械や医薬品のように、部品・原料を海外と複雑にやりとりしている製品では、関税コストが積み重なり、全体の収益性が低下するおそれもある。

この問題は、制度そのものの性質にも起因する。詳細は「相互関税のメリット・デメリットとは?保護主義の行方を考える」で議論している。

政府の対応と今後の焦点

日本政府は現在、トランプ政権の発表した「日本はアメリカに46%の関税を課しているに等しい」という根拠を精査しており、交渉に向けた準備を進めている。

今後の焦点は:

  • 相互関税の適用除外を求められるか
  • 自動車・医薬品などの分野別対応は可能か
  • 日米首脳会談やWTOルートでの調整余地があるか

いずれにせよ、影響は一時的なものではなく、中長期にわたって経済の構造に影響を与える政策として、継続的なモニタリングが必要だ。

親子トークタイム!子どもに伝える方法

経済や雇用といった話題は子どもには難しいかもしれないが、「お店」や「仕事」にたとえると理解しやすくなる。

子どもにこう話してみよう!

「○○ちゃん、いつも近くのお店でお菓子を100円で買ってたのに、ある日いきなり『120円になります』って言われたら、ちょっと困るよね。

アメリカが『日本から来るものにはもっとお金をかけさせよう』って言ってるのが、今回の“相互関税”っていうルールなんだ。

そのせいで、お菓子を作ってる工場の人の仕事が減っちゃうかもしれないし、お店もお客さんが減って困るかもしれない。だから、みんなすごく心配してるんだよ。」

まとめ

  • トランプ政権が日本に課した相互関税は24%と高水準で、自動車や機械、医薬品、農産物まで広く影響
  • 自動車産業ではGDPを0.2%押し下げるとの試算もあり、経済全体に影響が及ぶ
  • 株価下落や円高も進み、金融市場でも不安が広がっている
  • 中小企業や雇用、供給網にも長期的な波及が予想される
  • 政府は根拠を分析し、交渉による打開策を模索中
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