ワクチンの話を聞くと、「免疫」という言葉がよく出てきます。同時に、「自己免疫」という別の言葉も耳にすることがありますが、この2つには大きな違いがあります。
この記事では、「ワクチンによる免疫」と「自己免疫反応」がどう違うのかを、体のしくみからわかりやすく解説します。病気を防ぐ免疫と、自分の体を攻撃してしまう免疫。両者の違いを知ることは、健康の仕組みを理解する第一歩です。
免疫ってそもそも何?
「免疫」とは、私たちの体に備わっている防御システムです。ウイルスや細菌など、体にとっての「異物」が入ってくると、それを見つけて攻撃し、病気を防ぐ役割を果たします。
免疫には主に2つのタイプがあります。
- 自然免疫:生まれつき持っている免疫。異物を見つけるとすぐに反応するが、特定の病原体に対する記憶は残らない
- 獲得免疫:一度出会った異物を記憶し、次に同じものが来たときにすばやく反応する。ワクチンはこの獲得免疫を活用する
免疫の中心的な働きを担うのが、白血球の一種であるリンパ球です。リンパ球は、異物に対して抗体を作ったり、感染した細胞を破壊したりして、体を守ります。
ワクチンは免疫に“学習”させるしくみ
ワクチンは、本物のウイルスや細菌にかからなくても、その一部や弱毒化したものを体に入れて、免疫に「練習」させる技術です。
ワクチンを接種すると、免疫がその異物を「記憶」し、同じものが本当に入ってきたときにすばやく反応できるようになります。これが「獲得免疫」を利用した病気の予防です。
つまり、ワクチンは体の中にある免疫システムをうまく働かせるための“予習教材”のようなものです。
自己免疫は「敵と味方を間違える」状態
一方、自己免疫とは、免疫が自分の体の細胞や組織を「敵」と間違えて攻撃してしまう状態のことです。
本来、免疫は「これは自分の体」「これは外から来た異物」と見分ける能力があります。しかし、その仕組みが何らかの理由で乱れると、体の一部を異物と誤認してしまうのです。
これによって起こる病気を「自己免疫疾患」といい、代表的なものには以下があります:
- 1型糖尿病(すい臓の細胞が攻撃される)
- 関節リウマチ(関節の組織が攻撃される)
- 全身性エリテマトーデス(皮膚や臓器に広く炎症が起こる)
自己免疫は、感染や遺伝、環境などが複雑に関係して発症すると考えられており、原因の多くはまだ研究途中です。
ワクチンと自己免疫疾患に関連はあるのか?
一部では「ワクチンが自己免疫を引き起こすのではないか」という不安の声もありますが、科学的な研究では、一般的なワクチンが自己免疫疾患を誘発する明確な証拠は確認されていません。
むしろ、感染症そのものが自己免疫を引き起こすきっかけになる可能性があることが指摘されており、予防のためにワクチンを受ける意義は高いとされています。
医学的にリスクがある人に対しては、接種の可否を医師が慎重に判断しますが、通常の範囲で接種を受ける人にとって、ワクチンは安全で有効な手段とされています。
親子トークタイム!子供に伝える方法
「免疫」は、正しく働けば体を守ってくれるありがたい存在ですが、ときには間違ってしまうこともあるということを、やさしい言葉で伝えると、子どもも興味を持ちやすくなります。
子供にこう話してみよう!
体の中には、悪いばい菌を見つけてやっつける「守り隊」がいるんだ。でもね、たまにその守り隊が間違えて、自分の仲間を攻撃しちゃうことがあるんだよ。それが「自己免疫」っていう状態なんだ。ワクチンは、その守り隊に本当のばい菌が来る前に「こういう敵が来るかもよ!」って教えてくれる、トレーニングの道具なんだよ。
まとめ
・免疫は、体に入った異物を見つけて攻撃する防御システム
・ワクチンは、病気にかかる前に免疫を練習させる仕組み
・自己免疫は、自分の体を間違って攻撃してしまう異常反応
・自己免疫疾患には複数のタイプがあり、原因はまだ解明中
・ワクチンが自己免疫を引き起こすという根拠は現時点では乏しく、感染症を防ぐメリットの方が大きい