「選択的夫婦別姓が認められていないなら、今の制度でできることはあるの?」
そんな疑問を持つ方へ、この記事では現在の法制度の中で“事実上の夫婦別姓”を実現するための方法を紹介します。
日本ではまだ法的に選択的夫婦別姓は導入されていませんが、工夫次第で自分の姓を使い続ける道は残されています。
それが「通称使用」と「事実婚」という2つのアプローチです。
それぞれのやり方、メリット、デメリットをわかりやすく解説します。
まず夫婦別姓の制度全体をおさらいしたい方はこちらから:
👉 【図解あり】夫婦別姓とは?意味・目的・2025年制度化の行方まで徹底解説
通称使用とは?本名とは別に旧姓を使う方法
「通称使用」とは、戸籍上は改姓していても、日常生活や職場などで旧姓を使い続ける方法です。
たとえば、結婚して戸籍は「山田花子」になったけれど、職場ではこれまでどおり「佐藤花子」で通す――という形です。
実際に多くの企業や自治体で旧姓使用が認められており、名刺・社内システム・メールアドレスなどで旧姓を使用できます。
■ メリット
・結婚後もキャリア上の一貫性を保てる
・周囲の混乱が少ない
・書類によっては旧姓併記も可能
■ デメリット
・あくまで“通称”なので法的効力はない
・パスポート・免許証・銀行口座などは本名が必要
・結婚前の姓を証明する書類の提出が必要な場合もある
通称使用は、完全な解決ではありませんが、「今すぐできる現実的な対応」として多くの人が活用しています。
👉 夫婦別姓のメリット・デメリットとは?海外と日本の違いも解説
事実婚という選択肢:婚姻届を出さないという選び方
もうひとつの方法が「事実婚(内縁関係)」です。
これは法律上の婚姻手続きを行わず、パートナー関係として一緒に暮らす形です。
この場合、姓を変える必要はありません。お互いが自分の名前のままで生活でき、法的には“別姓”を実現する唯一の方法とも言えます。
■ メリット
・戸籍上の姓を変えずに夫婦関係を築ける
・改姓手続きや通称使用の制約がない
・事実婚でも住民票で「同一世帯」「夫(未届)」「妻(未届)」と記載可能
■ デメリット
・法律上は婚姻関係がないため、相続・配偶者控除・社会保障などで不利
・子どもをもうけた場合、親権や姓に関して注意が必要
・周囲の理解が得られにくいケースもある
特に相続や医療同意の場面で“他人扱い”されるリスクがあるため、遺言書や公正証書を用意することが推奨されます。
👉 戸籍はどうなる?夫婦別姓が家族制度に与える影響と「親子別姓」問題を解説
手続きの流れと注意点
通称使用・事実婚いずれにせよ、「名字を変えない」という選択をする際には、いくつかの準備が必要です。
【通称使用の場合】
・勤務先に旧姓使用の申請(社内ルールを確認)
・銀行、保険、公共機関などに本名で登録を忘れず
・結婚前の姓を証明する公的書類(戸籍抄本など)を保管
【事実婚の場合】
・住民票に「未届の夫」「未届の妻」として世帯を構成
・扶養や医療、相続に関して必要な契約・書類を整備
・子どもが生まれる場合は認知届や姓の決定を事前に相談
手続きのハードルはあるものの、しっかり準備すれば問題なく生活しているカップルは多く存在します。
👉 なぜ夫婦別姓にこだわる人がいるの?キャリア・差別・家制度から理由を解説
制度が整うまでの「つなぎ」ではない
通称使用も事実婚も、現行制度の中で柔軟に生きようとする人々の知恵です。
ただし、それらが“最終的な解決”かと言えば、そうではありません。
法的な保護や平等性が十分とは言えない以上、制度としての選択的夫婦別姓の実現が望まれています。
だからこそ、今は「どうすれば不利益を最小限に、自分らしく生きられるか」という視点が大切です。
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まとめ
・日本では制度上、選択的夫婦別姓はまだ認められていない
・しかし「通称使用」「事実婚」で名字を変えずに暮らす道はある
・それぞれにメリット・デメリットがあり、手続きや準備が重要
・制度改革が進むまで、現実的に対応するための知識が必要
・自分らしい生き方を守るために、できることを選び取ろう