イースター島に並ぶ、数百体の巨大な石像──モアイ像。
その無言の表情には、どこか人間らしさがあり、そして何か語りかけてくるような力を感じます。
「なぜ、あんなにも多くの石像を、人はつくったのだろう?」
この記事では、モアイ像が作られた理由や意味について、最新の研究とともに、文化的・歴史的背景をもとにやさしく解説します。
モアイ像は、祖先をあらわす像だった

モアイ像は、南太平洋の孤島・イースター島(ラパ・ヌイ島)で暮らしていたラパ・ヌイの人々によって作られました。
当時の島の人々にとって、祖先は特別な存在でした。
彼らは、亡くなった人の魂が、村や自然を守ってくれると信じていたのです。
その祖先の魂をかたちにしたものが、モアイ像。
つまり、モアイ像は「人を象ったお墓」ではなく、「祖先と生きるための存在」でした。
実際、多くのモアイ像は村に向かって建てられており、村を見守るように立っています。
この点は、前回の記事でも紹介しています
モアイ像はどこにあるの?地球のはしっこ“イースター島”の秘密
なぜあんなにも巨大な像を作ったのか?

モアイ像の多くは高さ4〜5メートル、重さ10トン以上。中には10メートルを超えるものもあります。
それほどの巨大な像を、当時の道具や技術だけでどうやって作ったのか――
この問いは、考古学者たちを何十年も魅了してきました。
彼らの信仰心の強さが、それだけの労力を支える原動力だったのか。
あるいは、島同士の競い合いのような文化があったのか。
理由は一つではありません。
**「心のよりどころ」「社会のつながり」「権威の象徴」**など、いくつもの意味が重なり合っていたと考えられています。
顔がみんな似ているのはなぜ?
モアイ像の顔は、どれも似たような表情をしています。
口を閉じて真っすぐ前を見つめるその姿は、どこか神聖で、厳かでもあります。
この表情には、「言葉ではなく、存在そのものが語る」という意味が込められていたと考えられます。
どれも似ているのは、特定の誰かではなく、祖先全体の象徴だからかもしれません。
また、目の部分は後からはめこまれる構造になっており、目が入れられた瞬間から“魂が宿る”と信じられていたという説もあります。
科学ではまだわからないことも多い
モアイ像がなぜ作られたのかについては、多くの研究が進められてきましたが、今も完全に解明されてはいません。
たとえば、
- なぜ突然、建造が止まったのか?
- 作りかけの像が残された理由は?
- 像が倒された跡があるのはなぜか?
こうした問いに対しては、今もさまざまな説が存在します。
一部では、外部からの影響ではなく島内の資源の枯渇や社会構造の変化が原因だったとも言われています。
この謎については、次回の記事でくわしく扱います。
親子トークタイム!モアイ像の“意味”を子どもにどう伝える?
モアイ像は、ただの「大きな顔の石」ではありません。
村の人々が「ご先祖さまは村を守ってくれる」と信じて、祈りをこめて建てた存在です。
子どもに伝えるときは、“信じる気持ちが形になったもの”として話すと、伝わりやすくなります。
たとえばこんなふうに話してみましょう。
「昔の人たちは、“亡くなった家族やご先祖さまが空の上から見守ってくれてる”って思ってたんだよ」
「でもね、それをただ心の中で思うだけじゃなくて、“ちゃんと目に見えるようにしよう”って思ったんだろうね」
「だから、石をけずって、おじいちゃんたちの顔みたいな大きな像を作って、村の方に向けて立たせたの。まるで“石のおじいちゃん”がずっと見てくれてるみたいにね」
また、子どもに考えさせる質問をしてみても良いでしょう。
- 「もし自分の家をずっと見守ってくれる像をつくるとしたら、どんな顔にする?」
- 「石で気持ちを伝えるって、ちょっとすごいよね。ほかにも“見守る”ものって身のまわりにあるかな?」
こうした問いかけは、想像力と感情をつなげるきっかけになります。
そして、「人がなぜ何かを残したくなるのか」を、自然と理解する力にもつながります。
まとめ
モアイ像は、イースター島に生きた人々の信仰と生活の中から生まれた、祖先を象徴する像でした。
「なぜ作られたのか?」という問いには、人を想う気持ち・文化・共同体の力など、さまざまな理由が重なり合っています。
今もそのすべては解き明かされておらず、モアイ像は見る人に“なぜ”を問いかけ続けています。
そこには、人類が文明を築いていく中で大切にしてきた想像力と祈りが、石となって残されているのかもしれません。