2025年4月、アメリカのトランプ大統領が発表した「相互関税(reciprocal tariff)」政策によって、世界中の国々に対して新たな関税率が設定された。これにより、輸出企業・投資家・経済アナリストだけでなく、一般市民にとっても各国との関係性を理解する必要性が高まっている。
本記事では、アメリカが各国に課す相互関税の国別一覧とその割合をまとめた。どの国にどれだけの関税が課されているのか、簡単に比較できる構成となっている。
この相互関税制度の背景や仕組みについて詳しく知りたい方は、「今さら聞けない『相互関税』とは?貿易の基本と仕組みをやさしく解説」を参照してほしい。
相互関税とは?制度の基本を再確認
トランプ政権が導入した相互関税とは、相手国の「アメリカに対する関税・非関税障壁などの負担」を数値化し、それに応じてアメリカ側も同水準の関税をかけるという考え方である。
ただし、その計算方法は実際の関税率とは異なり、貿易赤字を基準に割り出された数値がベースになっている。
制度の詳細や問題点については、「相互関税とは何か?トランプ政権の新政策が世界経済に与える衝撃」で詳しく解説している。
アメリカが発表した国別相互関税リスト(2025年4月4日時点)
以下は、トランプ政権が発表した相互関税のうち、主な貿易相手国を中心とした一覧である。
国・地域名 | アメリカに対する関税・障壁(想定) | アメリカが課す相互関税率 |
---|---|---|
中国 | 67% | 34%(既存20%+新たに34%) |
日本 | 46% | 24% |
ベトナム | 90% | 46% |
カンボジア | 98% | 49% |
台湾 | 64% | 32% |
韓国 | 50% | 25% |
インド | 52% | 26% |
タイ | 72% | 36% |
インドネシア | 64% | 32% |
マレーシア | 48% | 24% |
EU(欧州連合) | 39% | 20% |
スイス | 62% | 31% |
イギリス | 20% | 10% |
トルコ | 20% | 10% |
エジプト | 20% | 10% |
サウジアラビア | 20% | 10% |
UAE(アラブ首長国連邦) | 20% | 10% |
イスラエル | 34% | 17% |
シンガポール | 20% | 10% |
カナダ | N/A(別協定で25%) | 対象外(既存維持) |
メキシコ | N/A(別協定で25%) | 対象外(既存維持) |
※値はトランプ政権が発表した資料および報道をもとに構成。想定される関税・障壁には、付加価値税、補助金、規制等が含まれる。
【2025年4月10日追記】相互関税に関する最新の動き
2025年4月10日、アメリカ通商代表部(USTR)が発表した補足文書により、いくつかの国・地域の「相互関税対象リスト」が調整されたことが明らかになりました。変更点は以下のとおりです。
変更・更新されたポイント(2025年4月10日現在)
国・地域名 | 変更前の相互関税率 | 変更後の相互関税率 | 備考 |
---|---|---|---|
日本 | 24% | 22% | 日米経済対話を受けて2ポイント緩和。自動車部品の一部免除が背景。 |
韓国 | 25% | 27% | バッテリー関連補助金を「非関税障壁」と見なし再評価。 |
カナダ | 対象外 | 15%(新設定) | 原木と乳製品における米側の市場アクセス不足が理由。 |
フィリピン | — | 20%(新規追加) | 労働・環境基準の不履行が関税対象に。 |
※上記は2025年4月10日時点でUSTRが明示した情報と報道をもとに構成。
なぜこの数値なのか?「実際の関税率」との違いに注意
この関税率は、各国が実際にアメリカ製品にかけている関税の単純な平均ではない。むしろ、トランプ政権独自の基準に基づいた「推定的な障壁評価」とされている。
たとえば、日本の場合「関税率は低め」とされてきたが、非関税障壁(規制、流通コスト、消費税)などが加味された結果、46%という“関税相当負担”として扱われ、24%の相互関税が設定された。
この数値の意味とその正当性については、「相互関税のメリット・デメリットとは?保護主義の行方を考える」で解説している。
今後も更新される可能性がある「動的リスト」
相互関税は一度設定されたら終わりではない。政権の判断、交渉状況、各国の対応によって、税率は変更・追加される可能性がある。
また、相互関税が適用されていない品目(特に戦略物資やレアメタルなど)に対して、今後別の政策として関税が検討されることも報じられている。
このため、相互関税の影響は単なる“今ある数字”だけではなく、将来の外交・経済に波及していくことを念頭に置く必要がある。
今後の注意点
今回の修正は「相互関税リストは動的である」ことを改めて示しています。日米の交渉によって緩和されるケースがある一方で、補助金や技術基準などが“新たな障壁”と解釈され、関税が引き上げられる例も出ています。
特に、今後は「温室効果ガス排出規制」や「デジタル課税」など、貿易とは一見無関係な政策が“関税の理由”とされる可能性があり、より複雑化していく見込みです。
親子トークタイム!子どもに伝える方法
関税の数字や国名が並ぶと、子どもにとっては「むずかしい表」かもしれない。でも、身近な場面にたとえると理解しやすくなる。
子どもにこう話してみよう!
「たとえば○○ちゃんが友だちとお菓子を交換してるとするよ。いつも○○ちゃんは5個あげてるのに、相手は2個しかくれなかったら『ずるいな』って思うよね。
それで、○○ちゃんも次からは2個しかあげないって決めたとする。それが“相互関税”っていうルールなんだ。
でも、相手がびっくりして怒っちゃったらどうなるかな?今、そんなふうに世界の国々がもめはじめてるんだよ。」
まとめ
- 相互関税は、アメリカが自国への“負担”を基準に、各国に関税を課す新政策
- 実際の関税率とは異なり、貿易赤字などを元にした簡易計算で決定されている
- 日本には24%、中国には54%など、主な貿易相手国に高い関税が設定された
- 関税率は固定ではなく、今後も変動・追加の可能性がある
- 数字だけでなく、制度の背景や影響も理解しておくことが重要
更新履歴
- 2025年4月4日:初回投稿(トランプ政権による国別関税リストを掲載)
- 2025年4月10日:日本、韓国、カナダ、フィリピンの関税率に変更があったため、表と注釈を追記