宇宙に生命が存在するか――それは人類が長年抱き続けてきた最大の謎のひとつです。そして今、その解明にまた一歩近づいたかもしれません。アメリカの最新宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」が、127光年先の惑星で二酸化炭素を検出したというニュースが飛び込んできました。
この観測結果が何を意味し、なぜ科学者たちが色めき立っているのか。その背景にある宇宙のドラマを、わかりやすく解説します。
「HR 8799」ってどんな星?
今回観測されたのは、「HR 8799」と呼ばれる恒星と、その周囲を回る4つの巨大な太陽系外惑星です。場所はペガスス座の方向、地球からおよそ127光年先。
この星は太陽よりやや大きく、質量は約1.6倍。年齢はおよそ3000万歳で、宇宙の歴史からすれば“まだ若い”星です。
そして、その周囲を回る4つの惑星「HR 8799 b」「c」「d」「e」は、いずれも木星より少し大きく、質量はなんと7〜10倍ほど。この惑星系は2008年から観測が続けられてきましたが、今回はそれを超える精度で“直接”観測されました。
ウェッブ宇宙望遠鏡とは?
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、2021年に打ち上げられたNASAの最新鋭の宇宙望遠鏡です。赤外線の観測に特化しており、目には見えない光を捉えることで、遠く離れた天体の大気や組成まで調べることができます。
今回はそのJWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)を用いて、惑星からの光のスペクトル(波長の分布)を分析。その結果、HR 8799や、もうひとつの星「51 Eridani」の惑星に**二酸化炭素(CO₂)**が多く含まれていることが明らかになりました。
二酸化炭素が示す“惑星の成り立ち”
この発見がなぜ重要なのでしょうか?
それは、二酸化炭素の存在が「その惑星がどんなふうに作られたか」を教えてくれるからです。
惑星ができるときには主に2つのプロセスがあると考えられています。
- コア集積モデル:固体の核(コア)が少しずつ育ち、周囲のガスを引き寄せて大きくなる方式
- 重力不安定モデル:ガスが急に一気にまとまり、惑星が一度に誕生する方式
前者のコア集積モデルでは、惑星に重い元素が多く含まれ、後者では比較的少なくなる傾向があります。つまり、二酸化炭素の量は「どっちの方法でその惑星ができたか?」を見分ける“ヒント”なのです。
今回の観測でHR 8799や51 Eridaniの惑星には重い元素が多いことがわかり、これらがコア集積型で作られた可能性が高まりました。これは、木星や土星のような我々の太陽系の惑星とも共通点があるということを意味します。
これは“宇宙における私たちの位置”を知る研究
この研究のリーダーであるWilliam Balmer氏は、「私たちは他の惑星系と比較することで、自分たちの太陽系が特別なのか、それとも宇宙ではよくある存在なのかを知ろうとしている」と語ります。
宇宙には数千、数万の惑星系が存在していると考えられています。そのなかで、地球のような環境、あるいは生命を育む可能性のある星は、どのくらい“ありふれて”いるのか、それとも“奇跡的”な存在なのか。
こうした研究は、科学的な探求であると同時に、私たち自身を見つめ直す問いでもあるのです。
親子トークタイム!子供に伝える方法
惑星の話題は、子供たちの好奇心を刺激するテーマのひとつ。宇宙というスケールの大きな世界を、身近な“地球との比較”で伝えてみましょう。
子供にこう話してみよう!
「すっごく遠くの星のまわりを回ってる“ガスでできた星”に、なんと二酸化炭素があるってわかったんだって!二酸化炭素って、地球にもあるよね?
でも、それがどのくらいあるかを見ると、その星がどうやって生まれたのかもわかるらしいんだよ。木星とか土星みたいに、ガスを集めてできた星かもしれないんだって。宇宙のことを知ると、地球のことももっとわかってくるんだよ。」
まとめ
ウェッブ宇宙望遠鏡が127光年彼方でとらえた巨大惑星は、私たちに宇宙の“ものづくり”のヒントを与えてくれました。二酸化炭素という一見ありふれた物質の量が、その星の過去を語り、さらには太陽系とのつながりを示しています。
これは、単なる科学の発見ではありません。私たちが「宇宙における自分たちの居場所」を考える、壮大なストーリーの一部なのです。