地球上には「人が一度も立ったことのない場所」が、まだ存在します。
その場所の名は、ポイントネモ(Point Nemo)。
GPSがあっても、宇宙に人が住んでいても、この場所には誰もいません。
最も近い島からすら、船で10日以上。通信も届かない、目印もない。
どこまで行ってもただ波だけがうねり続ける――それが、地球で最も孤立した点です。
でも、なぜその場所が特別視されるのか?
誰も行けないのは本当なのか?
この記事では、ポイントネモに秘められた地球の地理、神話、科学、そしてロマンを、親子でわかりやすく学べるかたちで徹底的に解説します。
最後まで読めば、「地球はまだこんなに広かったのか」と、きっとワクワクが止まらなくなるはずです。
ポイントネモとは?それは“誰もいない場所”の象徴
ポイントネモとは、海の上で最も陸地から離れた地点です。
正式には「海洋到達不能極(Oceanic Pole of Inaccessibility)」と呼ばれています。
世界中のあらゆる島、大陸との距離を計算したうえで、「どこからも最も遠い1点」が定められたのです。
この地点は、1992年にクロアチアの技術者フルボイェ・ルチェリックによってコンピュータで計算され、世界に知られることとなりました。
そしてこの場所には、もう一つの名前がついています。
「ポイント・ネモ」――
これはジュール・ヴェルヌのSF小説『海底二万里』に登場する“ネモ船長”にちなんだ名前です。
ラテン語で“Nemo”は「誰でもない者」。
まさにこの地は、“誰でもない者”のための場所。地球が最後に残した“名前のない空白地帯”なのです。
正確な場所と、見えない座標

ポイントネモの座標は以下の通りです:
- 南緯48度52.6分
- 西経123度23.6分
地図で見ると、南太平洋の中央付近。何千キロも海が続いた先に、かろうじて浮かぶのはデュセ島、モツ・ヌイ島、マハー島という小さな島々のみ。
それぞれの島からの距離は、およそ2,688km。東京からマニラ、またはロサンゼルスからシカゴ以上の距離がある計算です。
つまり、**地球上で最も“人類に会えない場所”**というわけです。
見た目には何の目印もありません。ブイも岩も島影もない。
海の上の“想像上の点”にすぎないこの場所は、むしろその無意味さが、私たちの想像力を掻き立てるのです。
本当に誰も行ったことがないのか?
よく聞かれる疑問です。「誰か一度は行ってるんじゃないの?」
実際、ポイントネモの付近を航行した調査船はあるとされます。けれども、それはあくまで“付近”。
正確な座標ピンポイントに到達し、その場にとどまった記録を持つ人間は、現時点では存在していません。
なぜなら――この場所は、行けるけど「行く意味がない」場所だからです。
- GPSで正確に場所を捉えるには高度な技術と集中力が必要
- 島も岩礁もないため、停泊は不安定で危険
- 到達しても、見えるのはただ海、海、海
- そして何よりも、物理的な支援が一切ない孤立した場所
こうしてポイントネモは、“誰もいないまま残っている場所”であり続けているのです。
なぜ“行けない”とまで言われるのか?
ここで言う「行けない」は、「不可能」ではなく「実用的に不可能」という意味です。
地球上にあるのに、なぜ人が行かないのか。理由は主に以下の3つです。
1. 陸地から遠すぎる
最も近い有人地帯からも、10日以上の航海が必要。補給も中継もなし。途中で嵐にあったら命に関わります。
2. 気象と海流が激しい
ポイントネモ周辺は、南太平洋環流に囲まれており、常に海がうねっています。
また、南半球の偏西風(ローリング・フォーティーズ)によって、航海の難易度が格段に上がります。
3. 目印が何もない
座標に到達したところで、島も灯台も観測装置もなし。自分が本当にそこにいるのか、目視では一切確認できません。
宇宙の方が“近い”?ISSの通過と宇宙飛行士

ポイントネモに誰もいない時間、**最も近くにいる人間は“宇宙飛行士”**だと言われています。
ISS(国際宇宙ステーション)は地球を約90分で1周しています。その軌道がポイントネモの真上を通過することもあります。
このとき、地球上のどの人よりも近い“隣人”が、上空400kmの宇宙にいるということになるのです。
「孤独」の象徴であるポイントネモが、宇宙と地球をつなぐ接点でもあるという事実は、まさにロマンそのものです。
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ねえ、地球でいちばん人がいない場所って知ってる?
それはね、「ポイントネモ」って呼ばれてて、まわりに何もない海のまんなかにあるの。
島も船も、空港もないし、近くに住んでる人もいないんだよ。
でもね、もし上を宇宙ステーションが通っていたら、空の上の宇宙飛行士の方が“近くにいる人”ってことになるんだ。すごくない?
地球には、まだ“冒険の余地”があるんだよ。
まとめ
- ポイントネモとは、陸地から最も離れた海上の点=海洋到達不能極
- 名前の由来は『海底二万里』のネモ船長。「誰でもない者」の象徴
- 実際に到達した記録はなく、目印のない完全孤立地帯として存在
- 宇宙との関係も深く、ISSが真上を通過することもある
- 地球の“想像上の点”にこそ、私たちの知的好奇心が宿る