「ガムは飲み込むと7年間お腹に残る」
子どもの頃にそんな話を聞いたことがあるかもしれません。けれど、それは本当なのでしょうか?
実際に子どもがうっかりガムを飲み込んでしまったら、親としてどうすればいいのか——この記事では、その疑問に医学的根拠をもとにやさしくお答えします。
親子の会話にも使える形で、ガムの仕組み、体内での流れ、リスクの可能性、そして対応法まで、必要な知識を丁寧にまとめました。
ガムは飲み込んでも大丈夫?基本の考え方
まず結論から言うと、ガムを1個だけ飲み込んでしまっても、通常は心配ありません。
ガムは「チューインガムベース」と呼ばれる消化できない素材(天然ゴムや合成樹脂)から作られていますが、それは体にとって有害というわけではありません。
私たちの消化器官には、食物繊維など「消化はできないが排出されるもの」もあります。ガムもそのひとつであり、消化はされなくても、数日以内に便として自然に排出されるのが一般的です。
「お腹に7年残る」は本当なの?
この説は都市伝説です。
科学的な根拠はなく、しつけや恐怖を利用した“子どもへの警告”として語り継がれてきたに過ぎません。
ガムは確かに消化はされませんが、それが「お腹にずっと残る」わけではありません。
実際には、消化酵素では分解されずとも、腸のぜん動運動によって他の未消化物と一緒に体外へと押し出されていきます。
7年間とどまるようなことは、生理学的にもありえないのです。
なぜ「飲んじゃダメ」と言われるのか
「1個だけなら大丈夫」という前提はありますが、“まったく問題ない”とは言い切れない理由も存在します。
それは、次のようなケースが重なった場合です。
- 複数のガムを一度に飲み込んだ
- 包み紙や異物と一緒に飲んだ
- 小さな子ども(特に3歳未満)で、腸が未発達
- 便秘体質や消化器疾患の既往がある
このような条件が揃ったとき、ごくまれに腸閉塞のリスクが発生します。
腸閉塞とは、腸の中で内容物がつまって動かなくなる状態のことで、腹痛、吐き気、便秘、腹部の膨満などの症状が出る病気です。
症例は非常にまれですが、医療文献でも子どもがガムを複数個飲み込み、腸で詰まった事例が報告されています。
「消化されない」の正確な意味とは?
「消化されない」という言葉の裏には、「体にとどまるかもしれない」という不安が含まれがちです。
でも正確には、「消化されない」というのは体の酵素で分解・吸収されないという意味です。
ガムは構造的に、胃や腸の酵素でも分解されない素材です。
けれど、腸の運動によって大腸へ送られ、最終的には排出されます。
つまり、「出ていく経路は確保されている」わけで、1個飲んだ程度で深刻な影響は出ないというのが医学的な見解です。
子どもがガムを飲み込んだらどうする?
落ち着いて様子を見ましょう
1個だけ飲み込んだ場合は、すぐに病院へ行く必要はありません。
お腹が痛い様子もなく、いつも通りの排便があれば、数日で体外に出てくるのを待てば大丈夫です。
ただし、次のような場合には小児科への相談をおすすめします。
- 強い腹痛や嘔吐がある
- 3日以上便が出ない、あるいはお腹が極端に張っている
- 異物(包み紙など)も一緒に飲んだ可能性がある
- 飲み込んだガムの数が多い
- 3歳未満の子どもで、いつもと様子が違う
「ガム=即病院」ではありませんが、症状や状況次第では医師の判断が必要です。
親子トークタイム!子どもにどう説明する?
ガムを飲み込んだことを怒るだけでは、子どもは「ルールだから守る」以上の理解にはなりません。
大切なのは、「なぜそれが良くないのか」を言葉で説明することです。
たとえば、こんなふうに話してみましょう。
「ガムはお腹で溶けないから、飲み込んだらちょっと困っちゃうんだよ」
「1個くらいなら出てくるけど、いっぱい飲んじゃうと、お腹でつまっちゃうこともあるんだ」
「ガムは“噛むためのお菓子”だから、最後はちゃんと紙に出してゴミ箱へ。そこまでがルールだね」
知識のある説明は、子どもにとって納得につながる体験になります。
そしてそれは、単なる注意ではなく、判断力の育成にもなります。
まとめ
- ガムは体内で分解はされないが、通常は自然に排出される
- 「お腹に7年残る」という説は、科学的な根拠のない迷信である
- 飲み込んでも問題ないケースが多いが、条件次第で腸閉塞のリスクはゼロではない
- 子どもが飲み込んでも、冷静に状況を見極めて行動することが大切
- 親は「理由」をもってルールを伝え、知識をわかりやすく共有していこう
ガムを飲み込むというちょっとした出来事をきっかけに、身体のしくみや“気をつけるべきこと”を学べるチャンスにもなります。
怖がらせるだけでなく、「知っているから安心できる」そんな家庭での学びを大切にしていきましょう。