ガラスのしずくをハンマーで叩いても壊れないのに、尻尾を少し触るだけで一瞬で粉々に砕け散る──そんな不思議な物体「オランダの涙(ルパートの涙)」をご存じでしょうか?
一見ただのガラスに見えるこのしずくには、驚異的な強度と、信じられないほど危うい構造が隠されています。本記事では「なぜオランダの涙は割れるのか?」を中心に、その物理的メカニズムと破壊の瞬間を科学的にわかりやすく解説します。
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オランダの涙とはどんなものか
オランダの涙(Prince Rupert’s Drop)は、溶けたガラスを冷たい水に滴下して作られる、しずく型のガラス片です。作り方自体は単純ですが、性質は非常に特異です。
- 丸い部分(頭)はハンマーで叩いても壊れない
- 細い部分(尻尾)を少し傷つけると、全体が瞬時に粉々に砕ける
この矛盾したような性質には、ガラスの内部に蓄えられた「残留応力(ざんりゅうおうりょく)」が深く関係しています。
残留応力が「割れる原因」だった
オランダの涙は、急冷されることでガラスの内外に温度差が生まれ、内部に強い応力が残ったまま固まります。
- 表面:冷水に触れて急激に冷やされる → 硬く縮む → 強い圧縮応力
- 内部:ゆっくり冷える → 外に向かって膨張しようとする → 引張応力
このように、外側と内側で相反する力が働くことで、極端に安定した“外側”と、非常に不安定な“内側”という構造が生まれます。
そのため、頭の部分は非常に頑丈で、外力に強く、ハンマーでも壊れません。一方で、尻尾には引張応力が集中しており、ここにわずかな刺激が加わると、その不均衡が一気に連鎖破壊として全体に伝わるのです。
割れる瞬間に何が起きているのか
尻尾にヒビが入ると、内部に蓄積されたエネルギーが「破断の連鎖」として開放されます。これは、爆発的に割れるというより「分子レベルで全体が同時に崩れる」現象です。
実際の破壊速度は秒速2,000~4,000m。これは銃弾の速度に匹敵し、肉眼では確認できないほど高速です。
ハイスピードカメラで撮影すると、割れ始めた瞬間から全体が白く砕けていく様子が映し出され、まるで爆発のように見えます。
強さと脆さが同居する不思議なガラス
このように、オランダの涙は「外側の強さ」と「内部の不安定さ」が同居する非常にユニークな物質です。頭の部分だけを見れば防弾ガラスのような強度を持ちますが、尻尾を刺激するだけで、その強さは無に帰します。

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このギャップが、物理学的にも教育的にも高い関心を集めている理由です。
親子トークタイム!子どもに伝える方法
「このガラス、叩いても壊れないのに、ちょっとだけつつくと爆発するんだよ!」
そんな話から始めると、子どもたちは興味津々。オランダの涙は、目で見える“科学のふしぎ”を感じる絶好の教材になります。
子どもにこう話してみよう!
「このガラスのしずくの中には、見えない“力”がたくさんたまってるんだ。
外側はすごく頑丈なんだけど、しっぽの部分にはこわれそうな力がたくさんあってね、
ちょっとでも触ると、その力が一気にバーンって広がって全部が割れちゃうんだよ。
まるでガラスの中に小さな爆弾が入ってるみたいでしょ!」
オランダの涙の動画を一緒に見るのもおすすめです。目で見て、物理を「体感」することで、学びが一層深まります。
まとめ
- オランダの涙は、内部に蓄積された「残留応力」によって、独特な構造と性質を持つ
- 外側には圧縮応力が働き、非常に頑丈
- 尻尾には引張応力が集中し、そこを壊すと一瞬で全体が崩壊する
- 破壊速度は秒速2,000〜4,000mと非常に高速
- 親子で「なぜ割れるのか」を科学的に話し合うことで、物理の楽しさにふれられる