「地球を暑くする太陽の光を、人間の手で減らせたら?」
そんな映画のような話が、今、現実に近づいています。イギリスの研究機関「ARIA」が、地球の気温を“人為的に下げる”ための実験に50億円以上を投じると発表しました。
舞台は、空の上、成層圏。
目指すのは、太陽光を反射して地球を冷やすという、とても大胆な科学技術――その名も「ジオエンジニアリング」。
この記事では、イギリスが進める最新の気候実験と、それにまつわる夢とリスクについて、親子で楽しく学べるようにわかりやすく解説します。
ジオエンジニアリングってなに?空から地球を冷やす方法

空に“反射材”をまいて太陽光をカット?
ジオエンジニアリング(geoengineering)とは、人為的に地球環境を操作して気候をコントロールしようとする技術のこと。
その中でも今回注目されているのは「ソーラー・ジオエンジニアリング(Solar Geoengineering)」と呼ばれる方法です。
いくつかのアイデアがありますが、代表的なのはこの2つ:
- 成層圏にエアロゾル(微粒子)をまいて、太陽光の一部を反射する
- 海の雲を白くして光をより多く跳ね返す
つまり、太陽の光をうまく「はね返す」ことで地球に届く熱を減らすという方法なのです。
イギリスのARIAが進める「未来の気候実験」
ARIA(Advanced Research and Invention Agency)は、イギリス政府が2021年に設立した新しい研究機関です。
アメリカのDARPA(国防高等研究計画局)をモデルにしており、「リスクがあっても未来を切り開く研究」を支援することを目的としています。
2025年、ARIAは画期的なプログラムを発表しました。その目的は、太陽光を反射して地球を冷やす技術の有効性を、小規模な屋外実験で科学的に確かめることです。
この計画の主なポイントは次の通りです:
- 予算規模: 約5,680万ポンド(約110億円)
- 対象分野: 成層圏エアロゾルや雲の反射率操作など、ソーラージオエンジニアリングの候補技術
- 実験内容: 毒性のない微粒子を500m四方ほどの限定エリアに短時間(24時間以内)散布し、反射率や気象への影響をセンサーやドローンで詳細に観測
- 実施時期: 最も早くて2026年以降
- 重視する点: 実験の安全性・制御可能性・地域への影響最小化
このように、ARIAの実験は「空から地球を冷やす」というテーマに対し、世界で初めて現実的な一歩を踏み出そうとしている研究機関のひとつです。

この画像に描かれているように、実験ではドローンや気球を使って微粒子を拡散し、その様子を周囲の測定機器でモニタリングします。
そして、「いつでも止められる」「自然と消える」ように設計することで、社会的にも環境的にも透明性と安全性を確保することが重視されています。
ARIAの目的は単に技術を試すことではなく、「この技術は現実的なのか?」「社会として受け入れられるか?」という問いにも、科学的に答えを出すことにあります。
実験は安全?賛否の声が飛び交う
この研究には、大きな期待と同時に不安もあります。
賛成の声
- 地球温暖化が進む今、すぐに使える対策が必要
- 将来の危機に備えた“保険”として重要な研究
- 小規模実験で影響を評価するならリスクは低い
反対の声・懸念
- 天候パターンが変わって、他の地域に悪影響が出るかもしれない
- 一部の国だけが進めることで、**「気候の武器化」**につながる可能性
- 一度始めたら「やめられなくなる」のでは?
実際、国連や複数の科学者グループが、「地球規模での気候操作には国際的なルールが必要」と警鐘を鳴らしています。
親子トークタイム!子どもに伝える方法
ジオエンジニアリングは、まだ実験段階ですが、**「科学の力で地球を守ろうとする」**という視点から見ると、とても興味深い話です。
難しい内容でも、子どもには「もし太陽の光を減らせたら?」という問いかけから始めてみましょう。
子どもにこう話してみよう!
「ねえ、地球がどんどん暑くなってるって聞いたことあるよね?
それを止めるために、“空に魔法の粉”みたいなものをまいて、太陽の光をちょっとだけ反射させて冷やすっていう作戦があるんだって。
イギリスっていう国が、それを本当にやってみようとしてて、まずは小さな実験から始めるみたい。
うまくいけば、未来の地球を救うかもしれないし、でもちゃんと考えないとダメなこともいっぱいあるんだって。
どう思う? 空を使って地球の温度を下げるって、いいこと? こわいこと?」
まとめ
- イギリスのARIAは、太陽光を反射して地球を冷やす「ソーラー・ジオエンジニアリング」の研究に約110億円を投じると発表
- 成層圏に反射性の粒子をまくなどの実験が検討されている
- 賛否両論があり、安全性・倫理・国際ルールなど多くの課題も
- 親子で「未来の地球をどう守るか?」を考える良いきっかけになる