宇宙に漂うゴミ=スペースデブリの問題が深刻化する中、
2024年、日本の民間企業と国の機関が世界初の挑戦に成功しました。
それが、宇宙ベンチャー「アストロスケール」とJAXA(宇宙航空研究開発機構)による
商業デブリ除去実証(CRD2)プロジェクトのフェーズI。
人工衛星「ADRAS-J(アドラス・ジェー)」が、実際の宇宙ゴミに15メートルまで接近し、詳細な観測を成功させたのです。
この記事では、その背景と意義、今後の展開までをわかりやすくまとめます。
CRD2プロジェクトとは?
CRD2(Commercial Removal of Debris Demonstration)は、宇宙ゴミを安全に除去することを目指す実証プロジェクトです。
宇宙空間に放置されたデブリは、他の衛星や宇宙飛行士にとって重大な脅威であり、近年は除去技術の確立が急務となっています。
このプロジェクトは2段階構成です:
- フェーズI:デブリへの接近と情報取得(完了)
- フェーズII:実際のデブリ捕獲・除去(2027年予定)
ADRAS-Jの打ち上げと世界初の接近成功
フェーズIで使用された人工衛星「ADRAS-J」は、2024年2月にニュージーランドから打ち上げられました。
ADRAS-Jの目的は、「2009年に打ち上げられたH-IIAロケット15号機の上段ステージ」に接近し、
その3D形状・回転運動・損傷状態などを観測することでした。
そして2024年11月、ADRAS-Jは高度約600kmでデブリに15メートルまで接近。
これは民間企業による実デブリへの近傍運用(RPO)として世界初の成功例となりました。
なぜこの成果が重要なのか?
これまで宇宙ゴミの除去は「理論的な議論」や「地上での模擬実験」が中心でした。
しかし今回は実際の宇宙ゴミに、制御された形で接近し、高精度に観測することに成功したのです。
この観測により:
- 宇宙ゴミのサイズ・形・姿勢が正確に測定可能に
- 実際の除去ミッションに必要な安全距離や接近軌道のデータを取得
- 将来の捕獲技術(アーム、マグネットなど)設計への応用が可能に
つまり、これまで空想やシミュレーションだった「宇宙の掃除」が、いよいよ現実の技術として動き出したというわけです。
次のステップ:フェーズIIで捕獲・除去へ
JAXAとアストロスケールは、2024年8月に約132億円の契約を結び、
2027年度にはフェーズIIの打ち上げを予定しています。
このフェーズでは、デブリを実際に捕獲し、大気圏で燃やして処理する衛星を打ち上げます。
対象となるのは、フェーズIと同じH-IIAロケットの上段。
観測データを元に設計された新型の除去衛星が、確実にゴミを捕まえるという、まさに“宇宙のゴミ掃除”の最前線です。
世界が注目する「日本発」の技術力
今回のCRD2は、国際的にも高く評価されています。
- 世界初の実デブリRPOを達成(米・欧の宇宙機関より先行)
- 民間主導で宇宙環境保全に貢献
- 日本の宇宙ベンチャー技術力が証明された瞬間
宇宙ゴミの除去は、今後の宇宙開発や衛星ビジネスにとって不可欠なインフラ技術になると考えられており、アストロスケールの存在はますます大きくなっていくでしょう。
親子トークタイム!子どもに伝える方法
子どもにこう話してみよう!
「宇宙のゴミを掃除するロボットが、15メートルまで近づくのに成功したんだよ!」
そう伝えると、子どもは「えっ、宇宙にもゴミがあるの?どうやって掃除するの?」と興味を持つはずです。
そこでこう続けてみてください:
「宇宙には、使い終わった人工衛星やロケットの部品がいっぱいあるんだって。
それがぶつかると危ないから、日本の会社が“お掃除ロボ”を作って、実際にゴミに近づいて調べたんだよ。」
「今度はそのゴミをつかんで、地球に持ち帰って燃やすんだって!」
宇宙の話は難しいイメージがありますが、“ゴミ”と“掃除”という身近なテーマに置き換えることで、ぐっと分かりやすくなります。
関連記事:宇宙ゴミそのものについて知りたい方へ
👉 宇宙ゴミとは?スペースデブリの問題と未来のための対策をやさしく解説
まとめ
宇宙ゴミは、21世紀の宇宙開発における大きな課題です。
その解決に向けて、日本の企業と機関が世界初の実証に成功したことは歴史的な一歩だと言えるでしょう。
今後、宇宙を安全に、持続的に使い続けるためには、こうした取り組みを支え、理解し、広めていくことが大切です。
そしてそれは、宇宙を夢見る子どもたちにとっても、未来の希望をつなぐストーリーになるはずです。