ラプラスの悪魔とは?すべてが予測できる世界と自由意志のナゾをわかりやすく解説

ラプラスの悪魔とは?すべてが予測できる世界と自由意志のナゾをわかりやすく解説

「もし、この世界のすべてを知っている存在がいたら、未来は完全に予測できるのだろうか?」

そんな問いから生まれたのが、「ラプラスの悪魔」と呼ばれる思考実験です。
名前に“悪魔”とついていますが、これはオカルトではなく、科学と哲学の世界で真剣に議論されてきたテーマです。

この記事では、ラプラスの悪魔の意味と背景、現代科学との関係、そして自由意志とのつながりまでを、親子で楽しく学べるようにわかりやすく解説します。

ラプラスの悪魔とは?|すべてを知る“知性”がいたら

「ラプラスの悪魔」は、19世紀のフランスの数学者・天文学者であるピエール=シモン・ラプラスが考えた仮想の存在です。

彼は次のように考えました。

「もし、ある存在がこの宇宙にあるすべての物質の現在の位置と運動を正確に知っていたら、その存在は過去と未来のすべてを完全に予測できるだろう」

つまり、物理法則が完全に決まっていて、すべてが因果でつながっているのなら、未来はすでに決まっているはずだという考え方です。

この存在を、人間にとっては理解が及ばない“悪魔”になぞらえて「ラプラスの悪魔」と呼びます。

この発想の背景には、「決定論」という考え方があります。
決定論とは、「現在の状態がすべて未来を決めている」という立場です。サイコロを振っても、本当にすべてを知っていれば、出る目も予測できるというのが決定論の考えです。

なぜ否定されたのか?|量子力学と不確定性原理

20世紀になり、量子力学の登場によって、ラプラスの悪魔は科学的に否定されるようになります。

特に重要なのが、ハイゼンベルクの不確定性原理です。
これは、「ある粒子の位置と速度は、同時には正確に知ることができない」というルールです。

つまり、たとえどれだけ高度な知性でも、宇宙のすべての情報を“同時に完全に”知ることはできないということになります。

このことから、ラプラスの悪魔のような存在は理論的に不可能だと考えられるようになりました。

しかし、その一方で「情報が消えない」「すべての粒子には法則がある」などの意見もあり、完全には否定しきれないとも言われています。

自由意志は本当にあるのか?|ラプラスの悪魔と人間の選択

ラプラスの悪魔がもし本当に存在するとしたら――
人間の“選択”もすでにすべて決まっていることになります。

今日、何を食べるか。将来どんな仕事をするか。誰と出会うか。
そのすべてが、過去の状態から計算できてしまうのなら、私たちの自由意志は幻想にすぎないという結論になります。

これは哲学的にも非常に大きな問いです。
「私たちは自分の意思で動いているのか? それともすべて“決められた運命”に従っているだけなのか?」

このような疑問は、シミュレーション仮説のようなテーマとも重なります。

ラプラスの悪魔と似た思考実験|親殺しのパラドックスとの違い

時間と因果の問題を考える思考実験として、親殺しのパラドックスというものがあります。

これは「過去に戻って自分の祖父を殺したら、自分は存在できないのでは?」という矛盾の話です。

一方、ラプラスの悪魔は「すべてが決まっているなら、未来も変えられないのでは?」という問いです。

どちらも「時間」や「自由意志」について深く考えるテーマであり、SF作品や科学の世界でもよく扱われています。

映画・小説に登場する“ラプラスの悪魔”

ラプラスの悪魔は、哲学的なテーマでありながら、数々の映画や小説、漫画、ドラマにも登場します。

たとえば、日本では東野圭吾の小説『ラプラスの魔女』が有名で、2018年には映画化もされました。
この作品では、ある程度の自然現象を予測することで人の行動を先読みする登場人物が描かれます。

また、「すべてを予測できるコンピュータ」や「未来視能力」なども、ラプラスの悪魔的な発想から生まれた設定といえます。

親子トークタイム!子どもに伝える方法

子どもにこう話してみよう!

「もし、全部のことを計算できるコンピュータがあったら、明日起きることも分かると思う?」

そんな問いかけから始めてみましょう。

子どもが「うーん、わかるかも…」と答えたら、

「じゃあ、君が“今日はカレーにする!”って決めることも、もう決まってたら…それって本当に自分で決めてるのかな?」

と問いを投げかけてみてください。

そこから、

  • 人は本当に自由に選べるの?
  • 未来って決まっているのかな?
  • それとも変えられるのかな?

と話を広げれば、楽しく“哲学的な思考”を体験できます。

まとめ

ラプラスの悪魔は、「すべてがわかれば未来も予測できる」という考え方から生まれた思考実験です。

現代では量子力学や不確定性原理によって否定された側面もありますが、「自由意志」「決定論」「未来の予測」といった大切なテーマを考えるきっかけになっています。

このテーマは、親殺しのパラドックスシミュレーション仮説ともつながりが深く、SFや哲学、科学をつなぐ知的冒険の入り口です。

親子で一緒に「未来って決まってるの?」「人の心は自由なの?」と話し合うことで、子どもの思考力や好奇心を楽しく育てることができるでしょう。

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