2025年4月、欧州連合(EU)はアメリカに対する報復関税の発動を「秋以降まで延期する」と正式に発表しました。背景には、トランプ前大統領が掲げた「相互関税」戦略の再始動、そしてアメリカ大統領選をにらんだ緻密な外交判断が存在しています。
EUとアメリカは過去にも関税をめぐって激しく対立してきましたが、今回のEUの動きは「一歩引いた姿勢」に見えます。なぜEUは報復を急がないのか?そこには一見見えにくい、戦略的な“静かな駆け引き”があります。
報復関税とは?なぜ準備していたのか
報復関税とは、相手国が一方的に関税を引き上げた場合、それに対抗して自国も関税をかけ返すことです。EUは2024年から、アメリカの鉄鋼・アルミ製品への追加関税(通称「トランプ関税」)が再開される可能性に備え、独自の報復措置を検討してきました。
実際、2025年6月にはアメリカによる「対EU輸入品への相互関税」が発動されるとされていましたが、EUはあえて対抗措置を「今は発動しない」と決断したのです。
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EUが“待つ”ことを選んだ3つの理由
1. アメリカ大統領選を見据えた「政治的静観」
2025年11月に予定されるアメリカ大統領選挙では、トランプ氏が再選を狙っています。EUはこの時期に「対米強硬姿勢」を取れば、選挙戦をトランプ有利に進めてしまう可能性があると判断。あえて“選挙後に対応する”という静かなメッセージを出したと見る向きが強いです。
2. 世界経済への悪影響を回避したい
ウクライナ情勢や中東の不安定化で、EU経済も決して万全ではありません。このタイミングで報復関税を発動すれば、インフレ圧力や市場不安定化を招きかねません。
3. アメリカ側にも「再交渉」の余地を残したい
EUは水面下でバイデン政権関係者とも交渉を続けており、全面衝突を避けつつ、アメリカ側に外交的余地を与えているとも言われています。
親子トークタイム:子どもにどう説明する?
「EUが関税をかけ返すのをやめた」──これだけだと難しいですよね。
小学生にも伝わるように、こんなふうに話してみてください。
子どもにこう話してみよう!
「アメリカがヨーロッパから来た物に“お金(関税)”をかけようとしたから、ヨーロッパも『じゃあこっちもかけるよ!』って準備してたんだよ。でも、今すぐやるとケンカがもっと大きくなるし、アメリカの“選挙”っていう大事なイベントも近いから、ヨーロッパは『今はやめておこう』って決めたんだね。」
「けんかにならないように“ちょっと待つ”のも、頭のいい作戦なんだよ。」
子どもたちにとっても、「待つ」ことの意味や、外交の駆け引きを感じるきっかけになるかもしれません。
今後の注目ポイント
- アメリカ側の報復関税が6月に発動されるかどうか
- EUが実際に“秋以降”どのような行動に出るのか
- 日本を含む他国がどちらの陣営に近づくのか
この「関税戦争」は、単なる数字や品目の話ではありません。世界中の経済や外交がどう動くかに直結するテーマです。
関税の動きがどう世界に波及するのか、今後も丁寧に追っていきます。