「中国の巨大ダム・三峡ダムの影響で地球の回転が遅くなったらしい」「NASAもそれを認めた」──そんな驚きの投稿がSNSで話題になっています。
本当にそんなことがあるのでしょうか?この話、部分的に科学的な事実が含まれてはいますが、そのまま信じるのは危険です。
この記事では、「三峡ダムが地球の自転に影響を与えた」という話の根拠と誤解の正体を、NASAや地球物理学の観点からわかりやすく解説します。さらに、親子で一緒に考えられる「地球の自転と科学リテラシー」も紹介します。
三峡ダムってどれくらいすごい施設なの?

三峡ダム(さんきょうダム)は、中国の長江(ちょうこう)にある世界最大級の水力発電ダムです。
- 総貯水量:約393億立方メートル(日本の全家庭の年間使用量に匹敵)
- 完成:2006年
- 発電能力:世界最大級
この巨大なダムが注目される理由は、「地球の質量分布をわずかに変える可能性がある」と考えられているからです。
NASAは「地球の回転が遅くなった」と言ったのか?

この話のきっかけは、NASAに所属する地球物理学者たちのある分析です。彼らは、三峡ダムの貯水によって以下のような影響が理論上考えられると指摘しました。
- 水の質量が赤道から離れることで、地球の自転速度はわずかに「速くなる」
- 影響の大きさは、1日が0.06マイクロ秒短くなる程度
- 地軸が最大2cm程度ズレる可能性
つまり、地球の回転が“遅くなる”のではなく、“ほんの少し速くなる”方向の変化であり、人間が体感できるようなものではありません。
また、NASAはこれを「公式に認めた」とは発表しておらず、あくまでシミュレーションに基づいた推測的な分析です。
どうして「遅くなった」と誤解されたの?
SNSで拡散された投稿の多くは、「NASAが認めた」「地球の回転が遅くなった」と断定的な表現をしています。しかし、これは誤解や誇張に基づくものです。
考えられる理由は以下の通りです:
- 「地球の軸がズレた」という情報がショッキングに見える
- 科学的な専門用語が難しく、解釈が間違えやすい
- 「中国」「巨大ダム」「NASA」といった注目ワードが揃っており、情報が拡散しやすい
このように、一部の科学的事実が誤って伝えられた結果、まるで「地球が止まりかけている」かのような印象を与えてしまったのです。
地球の自転に影響を与える他の要因
実は、三峡ダム以外にも地球の回転に影響を与える要因はたくさんあります。
要因 | 影響内容 |
---|---|
大地震(例:2004年スマトラ沖地震) | 地軸のズレ/1日が数マイクロ秒短縮 |
氷河の融解 | 海水の移動による質量分布の変化 |
大気や海流の移動 | 年間を通じて自転速度に微細な影響 |
これらに比べても、三峡ダムの影響はごくごく小さいと考えられています。
親子トークタイム!子どもに伝える方法
SNSの情報がすべて正しいとは限らない。そんな大切な考え方を、子どもにもやさしく伝えるにはどうしたらいいのでしょう?
この話題は、「地球はどうやって回っているの?」「水の重さで何が変わるの?」という素朴な疑問につながる科学的好奇心を刺激する絶好の素材です。
子どもにこう話してみよう!
「ねえ、地球ってずーっとクルクル回ってるって知ってる?
すごく大きなダムにたくさんの水をためると、地球のバランスがちょーっとだけ変わるんだって。
でもね、人間がわかるほどじゃなくて、本当にすっごくすっごく小さな変化。
この前、ネットで『ダムのせいで地球の回転が止まりそう』なんて話が広がってたけど、それはちょっと言いすぎみたい。
ニュースを見たら、“本当にそうかな?”って考えるのが、科学を学ぶってことなんだよ。」
まとめ
- SNSで話題になった「三峡ダムが地球の回転を遅くした」は科学的に不正確。
- NASAの分析では、ごくわずかに自転が速くなる方向の変化が示唆されている。
- 地球の回転に影響する要因は他にもあり、ダムの影響は極めて微細。
- 子どもと一緒に「本当かな?」と考えることで、科学的思考とメディアリテラシーが育つ。