ロシア・ウクライナ戦争では、戦場だけでなく、情報空間でも熾烈な戦いが繰り広げられています。戦況を有利にするため、ロシア・ウクライナ双方が偽情報やフェイクニュースを拡散し、相手国の士気を下げたり、国際世論を操作しようとしています。
特に、SNSの発達により、一般市民でも簡単に情報を拡散できる時代となり、フェイクニュースが爆発的に広がるリスクが高まっています。本記事では、ロシア・ウクライナ戦争における情報戦の実態と、それが戦争に与える影響について詳しく解説します。
1. フェイクニュースとは?情報戦の目的
フェイクニュースとは、意図的に作られた虚偽の情報や誤解を招くような報道のことを指します。戦争における情報戦の目的は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
① 世論操作
戦争の正当性を国民や国際社会に訴えるために、フェイクニュースが活用されます。例えば、ロシアは「ウクライナ政府はネオナチであり、ウクライナのロシア系住民を迫害している」といった主張を展開し、戦争の大義名分を作り出しました。
② 敵国の士気低下
敵国の兵士や国民の士気を下げるために、偽情報が用いられます。例えば、「ウクライナ軍の指導部が国外に逃亡した」「ロシア軍が主要都市を占領した」といった虚偽の情報が拡散され、ウクライナ側の動揺を狙いました。
③ 国際社会の分断
戦争への支援を妨げるために、相手国の同盟国に偽情報を流し、不信感を煽る戦術も使われます。例えば、ロシアは「ウクライナに提供された兵器が違法市場に流出している」と主張し、西側諸国の支援を減少させることを狙いました。
2. ロシアのフェイクニュース戦略
ロシアは、情報戦を軍事戦略の一環として活用しており、さまざまな手法で偽情報を拡散しています。
① SNSでの大量拡散
ロシアはボット(自動投稿プログラム)やトロール(意図的に世論を混乱させるネットユーザー)を使い、大量のフェイクニュースを拡散しています。例えば、「ゼレンスキー大統領がウクライナを脱出した」といったデマが、ロシア発の偽アカウントによって広められました。
② AIを活用したフェイク映像の制作
ロシアはディープフェイク技術を駆使し、実在しない映像を作成しています。例えば、ウクライナの指導者が降伏を宣言する偽の動画がSNS上で拡散されましたが、後にフェイクであることが判明しました。
③ 国営メディアを通じたプロパガンダ
ロシアの国営メディアは、戦争の状況を歪めて伝え、自国民に対してロシア軍の勝利を強調する報道を行っています。また、西側メディアに対抗するために、英語・フランス語・ドイツ語など多言語でのプロパガンダ報道を展開しています。
3. ウクライナのフェイクニュース対策
ロシアの情報戦に対抗するため、ウクライナ政府はさまざまな手法で偽情報の拡散を防ごうとしています。
① ファクトチェック機関の設立
ウクライナ政府は、SNSやメディア上の誤情報を監視する機関を設立し、即座に訂正情報を発信しています。また、独立系のジャーナリストや調査機関とも連携し、正確な情報の提供に努めています。
② 国際機関との協力
ウクライナはNATOやEUと協力し、ロシアの情報操作を暴露する活動を行っています。特に、西側メディアとの連携を強化し、ロシア発の偽情報に対抗する戦略を取っています。
③ メディアリテラシーの向上
ウクライナでは、市民に対して「フェイクニュースを見抜くための教育」を実施しています。学校教育の中で、情報の正確性を見極めるスキルを教え、国民のメディアリテラシーを向上させています。
【おやこトークタイム!】子どもに伝える方法
情報戦やフェイクニュースの仕組みは、子どもにとって理解しづらいかもしれません。以下のように、身近な例えを使って説明すると分かりやすくなります。
子どもにこう話してみよう
「ニュースって、いつも本当のことを伝えているとは限らないんだよ。戦争のときには、相手を困らせるために、わざと嘘のニュースを広めることがあるんだ。
たとえば、学校で友達が『先生が宿題をなくしたらしいよ』って言ったら、みんなびっくりするよね?でも、それが本当かどうか確かめることが大事だよね?戦争でも同じで、うわさをそのまま信じるのではなく、正しい情報かどうかを確認することがとても大切なんだよ。」
まとめ
- ロシアはSNSや国営メディアを活用し、フェイクニュースを拡散している
- フェイクニュースの目的は、世論操作・敵国の士気低下・国際社会の分断
- ウクライナは、ファクトチェックや国際機関との協力を通じて対抗
- 戦争だけでなく、普段の生活でも情報を正しく見極める力が必要
現代の戦争では、武器だけでなく、情報そのものが「武器」となり得ます。フェイクニュースに惑わされず、正しい情報を見極める力を身につけることが、これからの時代には欠かせません。